マリア・モンテッソーリによって考案されたモンテッソーリ教育は、自らの研究成果である感覚教育法を基にしています。1907年にイタリアで貧困層の健常児を対象とした保育施設「子どもの家」において完成され、瞬く間に欧米を中心に世界各国に広がりました。特にアメリカでは全土に普及し、現在では多くの私立校をはじめ、数百の公立学校でもモンテッソーリ・プログラムが導入されています。
1.特徴
「子どもの家」と呼ばれる学校では、子ども達は自由に個別学習をし、一人ひとりが自分に合う遊びをみつけ、自分のペースで納得いくまで学習します。さまざまな能力の獲得には、それぞれ最適な時期があり、モンテッソーリ教育ではこの「敏感期」に育つ、子どもの「自発性」を重んじています。知的好奇心が自発的に現れるように「自由な環境」を提供しています。子どもの発達に適した環境を整えることによって、子どもは自ら考え決断し行動するという生きる力の基礎を養います。また縦割りクラスによって、異年齢同士がお互いから学びあいます。年下は年上を見て学び、年上は年下の世話や教えることを学びます。
2.教育のメソッド
モンテッソーリ教育には、日常生活の練習、感覚教育、言語教育、算数教育、文化教育の5分野のメソッドがあります。
・日常生活の練習:洗濯やアイロンがけなど日常生活の様々な練習をしながら、子どもの生活を自立へ導き、精神的に自立する心を養います。子どもサイズの用具はすべて本物の木やガラスや陶器で揃えられ、常に清潔に保たれています。用具の色や形も美しく子どもはとても興味をもち触ってみますが、用具が壊れないように慎重に扱うようになります。
・感覚教育:特に3歳から6歳の間に発達する感覚教育は、子どもの視覚、聴覚、触覚、臭覚、味覚の五感が磨かれ知的活動の基になる重要なものだと捉えています。子どもの感覚を刺激する木製の玩具である「教具」を通して、様々な感覚を身につけていきます。教具には、立方体であるピンクタワー、色とりどりの円柱や板や触覚板や重量板や圧覚板、茶色い階段、幾何学立体、構成三角形、温覚筒、嗅覚筒、音感ベル、味覚びん、数の棒など、よく考えられた教材で、形や大きさや手触りや重さや材質などの感覚を養います。
・言語教育:遊びの中で話す、書く、読む、文法を学びます。果物、動物、乗り物などのカードで絵合わせをしたり、50音カードを並べながらコミュニケーション力をつけていきます。絵合わせカードは、同じ絵のカードがペアになっており、一枚には名前が書いてあり、もう一枚はブランクになっていて、絵合わせをしながら言葉を覚えていくものです。50音カードはパズルになっていて、50音表を完成していきます。また「教具」を通して感じ取れる形容詞などの言語教育も組み込まれています。
・算数教育:十進法のビーズや、算数棒、数字カード、切手遊びをしながら量物、数詞、数字などの数量概念を感覚によって自然に身につけていきます。具体的に捉えることのできる「量物」と、それを言い表す「数詞」と、それを書き表すのに用いる記号の「数字」を一致させ数量の概念を会得していきます。
・文化教育:動植物、地理、地学、歴史、道徳(宗教)、音楽、体育、美術などが含まれ、太陽系の惑星の模型や世界地図、アメリカ地理パズル、動植物の絵カードを使いながら、生命の神秘や芸術に関する表現力などを育みます。
自ら発見し、自ら学び成長する子は輝いています。モンテッソーリ教育は、子どもが自ら成長する力・生きる力を育む教育法です。