1920年にアメリカのヘレン・パーカーストによって考案されたドルトン・プランは、現在では早期英才教育として知られ、世界各地に学校が作られています。その中で最も有名なものは、パーカースト自身が創立したニューヨークのプレップ・スクールであるドルトンスクールで、別名「子ども大学」と呼ばれています。幼児から高校生までの一貫教育をしています。

1.特徴

ドルトン教育は、自発性、自主性を重んじ問題解決学習を取り入れた教育で、クラスの人数にかかわらず一人ひとりの能力を伸ばす目的で考案されました。自由と協同という2つの原理が柱になっています。

2.自由

「自由の原理」は生徒一人ひとりの興味を尊重して能力を伸ばすことを目的にしており、その過程で自主性と創造性を育みます。生徒は自分で立てた学習計画を元に、課題や提出期限などについてハウスアドバイザーと呼ばれる担任の先生と契約を結び、責任を持って自主的に学習を進めていきます。自分で計画を立て時間を有効に使いながら学習することで、自主性や計画性を養います。

教室には、各教科ごとに生徒と担任の先生が連絡を取りあうカードが用意されています。学習の進行については口頭で済ませるのではなくお互いに書面で伝えます。特に担任の先生は生徒が到達しなければならないことを、明確に示しておきます。生徒は自習が終われば学習進行状態をカードに記入して提出します。合格した生徒は教室の学習進度表に自分のポイントを書き込んでいくので、各生徒の進行状況がすぐに把握できるようになっています。

学習は完全に個別化され、各自の能力に応じて作られます。低学年の3年生まではアドバイザーが中心ですが、4年生からは全ての教科に専門の先生がつきます。高学年になると理科や数学などの専門教科は、ラボ(実験室)にいる専門の先生に就いて深く学習することができます。ラボでは生徒と先生が一対一で話し合い、先生は個人の意見や主体的な姿勢を最大限に尊重し助言を与えます。最終的には個人の興味に応じたテーマについて研究をしています。

生徒が勉強に没頭しているときは、先生も妨害することはできず、自由に継続させ徹底的に学ばせています。興味がわくと精神はいっそう鋭敏になり、どんな難問題でも克服することができるからです。各人のペースで十分に必要な時間を取りながら自由に学習をすることで、物事に取り組む意欲や態度や持続力を養います。

3.協同

「協同の原理」は様々な人々との交流を通じて社会性と協調性を身につけます。学校は「人と共に生きることを学ぶコミュニティー」であり、集団の中の一人として行動させます。他のクラスや他学年など別の集団とも交流し、多様な価値観に触れ、社会性や協調性を身につけます。

ドルトン教育は、自由と協同によって子どもの独立心と責任感と信頼感を養う教育です。