iD Tech主催のサマーキャンプは、毎年アメリカ全土の大学(ニューヨーク大学・メリーランド大学・ワシントン大学 その他多数)で開催されています。今年は参加者の規模が全体で50,000人以上にもなり、アメリカでは人気のプログラムの一つとして認識されつつあります。これまで、PBS NEWSHOURやNEW YORK TIMESなどで取り上げられてきました。

今回は、開催校の一つであるカリフォルニア大学バークレー校を取材しました。

本大学はカリフォルニア州バークレーに位置し、機械系の設備が充実しているキャンパスとなっています。そのため、プログラミングや3Dプリンターのコースは非常に人気があります。そして、このキャンプの特徴として、世間で注目されているプログラミングに関する内容は、即座にプログラムに導入されるため、毎年新しいコースが増設されています。

インストラクターに関しては、高校教員や(本プログラムの採用試験3回全て合格した)プログラミング系専攻の大学生が指導にあたっています。その他に事前準備として、指導者研修も済ませることが必須なため、専門分野に強く優秀なインストラクターから、子どもたちは適切な指導を受けることができます。さらに、ライフラインとしてのスタッフも常に配置し、万が一の緊急時に対応できるよう備えています。また、個人の食物アレルギー等のデータ管理は、コンピューターの他に子どもたちが首から下げているカードからも判断が行えるように考慮されています。

参加者は開催地の近くの子どもだけでなく、海外から参加する子どももいます。10歳以上の場合は、大学の寮に2週間宿泊することが可能なため、大学生のような生活を体験しながらプログラムに参加することができます。親元を離れて、仲間と過ごす共同生活は、自立心が育まれていくということで好評です。

習熟度レベルは初心者〜上級者へと多岐にわたりますが、子どもたちはコンピューター上で自分のレベルを踏まえて、学習順序・ペースを決めることが出来ます。アメリカの学校教育現場で最も多く取り入れられている学習方法の一つである「ブレンド型学習」として、構成されています。そのため、グループ内のレベルは様々です。1グループの人員構成について、インストラクター:子どもの割合は、1:8体制としています。確実に丁寧にサポートできる環境づくりをしているので、インストラクターは子ども一人ひとりに随時、学習のサポートを行っていきます。また、上級レベルの参加者は初心者やつまづいている仲間を自主的にサポートしながら進めていくという協力的な姿が多く見受けられます。その結果、初心者の子どもでも、チャレンジ精神を維持したまま活動に集中することができます。
そして、プログラムの最終日は両親へ作った作品を発表する場が設けられています。プログラム終了時には、作品を完成させた達成感と自信で溢れています。

今回は4つの講座を取材しましたので紹介します。

1.プログラミング

年齢:7‐9歳
期間:5日間
好まれる参加対象者:パズル好き、ゲームを考えることが好き
使用ソフトウェア:Tynker SCRATCH
目的:プログラミングツールを使って、Drag&Dropのプログラミングに触れる
目標:ビデオゲームを作り、冒険型の動画ゲームを製作する
学習内容:「クリティカルシンキング・問題解決能力・適応能力」の育成を目指す
コードが書かれている色のついたブロックを並べて、プログラミングの基本を学習する。一連の動作を確認後、自分で作成したい動画をプログラムする。
これらの学習過程(コンピューターサイエンス・ソフトウェア開発等)が今後、*STEMの基本に繋がっていくことに気づかせる。

*STEM:サイエンス(science)、テクノロジー(technology)、エンジニアリング(engineering)、数学(math)の4つの分野に注視した教育方法

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2.ゲームデザイン

年齢:7−9歳
期間:5日間
好まれる参加対象者:必須条件は特になし
使用ソフトウェア:Minecraft Adobe Photoshop
目的:ツールを通して問題解決しゲームスケッチ(主人公、景色、建物)に触れる
目標:ビデオゲームのコース設計(落し穴のトラップ等)、アドベンチャーの地図を完成させる
学習内容:「創造性・問題解決能力・プロジェクトの立案」の育成を目指す
3Dブロックを組み立てるための一連の動作を確認し、その後、自分が創造したい世界を考え、建物を設置していく。さらに、ゲーム内で機械操作を遠隔から行える「レッドストーン回路」やアドベンチャーの地図に拡張機能をもたせる「コマンドブロック」というプログラムを書き足して、完成を目指す。

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3.3Dプリンター

年齢:10−12歳
期間:5日間
好まれる参加対象者:絵を描いたり、デザイン、イメージすることが好き
使用ソフトウェア:Autodesk 123D Design software
目的:3Dプリンターで物が出来上がるまでの過程の仕組みを理解する
目標:3Dプリンターで作りたいものを設計し作る
学習内容:「創造性・プロジェクトの立案・テクニカルデザインスキル」の育成を目指す
円の描き方、3D化、厚み・幅のデザイン方法の一連を理解し、マウスの動かし方を確認しながら、デザインの練習を行う。その後、自分で作りたい物のデザインを考え、実際にデザインを行っていき、完成を目指す。

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4.ロボット

年齢:7−9歳
期間:5日間
好まれる参加対象者:ロボットに興味があり、チームでの製作活動が好き
使用ソフトウェア:LEGO MINDSTORMS Education EV3 Base Set and Software
目的:LEGO構築の設計やDrag&Dropのプログラミングに触れる
目標:チームでロボット設計を行う
学習内容:「問題解決能力・創造性・適応能力」の育成を目指す
ロボットの構造を理解するために、実際にロボットを動かして、パーツごとの動作の可能な稼動範囲を確認する。その後、タッチセンサー機能等のプログラムの設計方法を学び、実際に作りたいロボットを考えて、プログラムを行なっていく。設計したプログラム通りにロボットが動くことを確認しながら、完成させていく。

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