ニューヨークの学校

アメリカの公立学校は日本に比べ学校ごとのレベルの差が大きいという特徴があります。公立学校の運営費は所在地域の固定資産税(学齢期の子どもがいない住民も全員払う義務がある)で大部分がまかなわれますが、学校区によってかかる学校税率が異なるため、教育税の高い裕福な学校区はその分設備が整いよい教育を受けられるという仕組みになっています。逆に貧困層の多い居住区にある学校では、よい教育が受けにくい現状があります。

ニューヨーク市はアメリカの中でも少し特殊で同じ学校区の学校でも学校によってレベルがかなり異なるため、年間の学費が300万円以上もする私立校を除いた場合、必然的に良い公立学校に応募が集中し競争率が高くなります。
そして良い公立学校の中で最も教育水準の高い学校にギフテッドプログラムというものがあります。

ギフテッドプログラムってなに?

ギフテッドプログラムとは、生まれつき秀でた学習能力や素質を持っている子どものための特別なプログラムで、ニューヨーク以外でも多くのアメリカの州でも導入されています。
ニューヨーク市はほとんどの学校区の公立学校の中にギフテッドのクラスが設置されています。さらにニューヨーク市には普通学級のない全校ギフテッド生徒のみの学校が5校あります。
どの学校も学費は公立校のため無料です。

どうやって入るの?

年に1回、ニューヨークに住んでいる、キンダーガーデンに入る前の年(4歳)から3年生に進級する年(7歳)までの児童を対象にテストを行い、その結果によって決まります。
テストは無料で、毎年秋に学校区のウェブサイトから申し込め、1月か2月にテストが実施されます。
テストの結果、90パーセンタイル(パーセンタイルとは、統計的に全国の同年齢の90%の子どもの点数よりも良い点数という意味)の点数がとれた子どもがギフテッドプログラムの対象(ニューヨーク市の全校ギフテッドの学校は97パーセンタイル以上)となります。結果はウェブサイトからも確認でき、手紙でも届きます。

2016年度の新キンダーガーデン(5歳)では14,483人がテストを申し込み、その内2,730人(19%)が学校区のギフテッドプログラム対象、1,800人(12%)が全校ギフテッドの学校対象という結果でした。
ただし、定員が限られているため、申し込む資格があった場合でも人気校では抽選となり必ずしも希望校に入れないことが多いです。

ギフテッドのテストはどんなもの?

テストはOtis-Lennon School Ability Test (OLSAT) という言語分野(聴解力や論理性など)を見るテストとNaglieri Nonverbal Ability Test (NNAT)という言葉を使わない能力(問題解決能力、視覚的な論理性、空間認識など)をみるテストの2種類を行います。
ニューヨークは人種のるつぼと言われるだけあって、ギフテッドのテストも第一言語が英語でない子どもは色々な言語(アラビア語、フランス語、スペンイン語、ロシア語、中国語、韓国語など)で受けることができます。残念ながら今現在日本語で受けることはできません。

ギフテッドテストの準備

教育意識の高いニューヨーカーの間ではギフテッドの準備を子どもが小さい頃から行っています。オンラインでギフテッドのテスト用の練習問題を提供するウェブサイトやギフテッドテスト対策用の個人塾、ギフテッドテスト対策専門の家庭教師、市販の対策本など様々なものがあります。

ギフテッドプログラムにはどんな学校があるの?

1.ニューヨーク市の5校の全校ギフテッド児童のみの学校

テストのスコアが97パーセンタイル以上の子が申し込めます。ただし、定員が応募者よりも少なくなるため、実際はスコアが99パーセンタイルでないと入ることが難しいと言われています。99パーセンタイルでも人気校である、マンハッタンのAndersonやNEST+M では抽選で外れてしまい入学できないこともあります。

2.ニューヨーク市の公立校に設置されたギフテッドクラス

普通の学校の中にクラス単位で設置されているギフテッドがあります。ほとんどの学校区にギフテッドクラスのある学校を設置しています。その中でも人気校には応募が集中するため、競争率は学校によって異なってきます。そして、学校区に居住している生徒が優先的に入学できる仕組みになっています。

ギフテッドの学校は普通の学校とどう違うの?

ギフテッドの学校には日本の教育指導要領のようなものがないため、学校の教育方針により大きく異なります。宿題の量も、キンダーガーデンから毎日大量に課される学校から、週に1回程度の学校まで様々です。
例えば、ギフテッドのみの学校、NEST+Mでは算数はシンガポール式算数を取り入れており、第二外国語(キンダーガーデンから小学5年生まで必須)は中国語を教えています。情操教育にも力を入れていて、メディテーション(瞑想)やヨガ、マインドフルネスのワークショップを授業に取り入れているクラスもあります。さらには、授業の一環としてチェスも取り入れています。
制服のある学校もあれば、ない学校もあります。ただし、全体的に見受けられるのは教えるスピードが速く、授業も掘り下げて学ぶことが多いです。(例えば、NEST+Mのキンダーガーデン(5歳)の動物についての学習では「脊椎・無脊椎動物」の分類、生息地、虫・両生類・魚・動物などの特徴や見分け方などまで掘り下げて学ぶ)

ギフテッドは何年生まで

全校ギフテッドの学校5校のうち4校は中学(1校は高校まで)まで続き、一度入学したらたとえ成績が悪くても退学させられることはありません。また、入った後に何かしら特別な状況(学習障害、ADHDなど)があることがわかった場合も学校内で個々に合わせた、カウンセリングや、読み書きの専門家による指導、スピーチセラピーなどが受けられます。

ギフテッドに入る利点や注意点

ギフテッドの利点は、より高度で刺激的な授業を受けられること、同じように教育に対する意識の高い家庭の子ども達に囲まれて学習できること、多様な文化的背景のある子ども達が多いこと(例えば、Nest+Mでは人種構成はアフリカ系アメリカ人9%, ヒスパニック系11% ,白人 42% , 日本人を含めたアジア系 33%)、教師も熱心で子どもの能力を伸ばすことに本気の教師が多いことなどが挙げられます。また、全体がギフテッド生徒の学校に至っては中学校受験をしなくてもいいということも魅力の一つです。
※ニューヨーク市以外であれば日本と同様に居住区の中学校に進学できますが、ニューヨーク市は中学校のレベル差も大きいため競争率が高い学校も多く、志望している学校に入るためには、小学三年生から毎年行われる州の統一学力テスト、英語と算数の結果や小学校の出席率、小学校の成績表、入学試験や面接などで判断されます。

ただし、気をつけたい点もあります。それは、スピードや宿題の量が多い分、高い知能は持っていても、勉強を落ち着いてできる姿勢のない子どもにとっては入学してから大変な場合もあります。ギフテッドの結果が届いた後に、それぞれの学校が入学希望者への説明会を行うオープンスクールが開催されるので、そこで学校の教育方針など細かい点を確認し、子どもと親と家庭に合うかどうか判断する必要があります。

それでも、それぞれの子どもの成長スピードに合わせて、伸びるところまでとことん伸ばそうとするのは、アメリカならではの素晴らしい教育だといえるでしょう。