これまで転勤族の子弟教育や国際人の教育といえば、私立のエリート校やインターナショナルスクールでした。ところが今、国際バカロレア(IB)の教育方針が世界中で認められ、日本にも広まってきました。日本各地にIBと提携した英語イマージョンスクールが開校したり、一部カリキュラムを導入する学校もあり、国際人を目指す若者たちの注目を集めています。

人間の総合力を評価する国際バカロレアの教育方針

学生は知識だけではなく、ボランティアを通して地域社会に奉仕しながら深く人格を磨いていき、リーダーシップや生きる力を身につけます。また異文化を理解して尊重し、豊かな知識と優れた見識をもち、思いやりがあり、好奇心が旺盛で、より平和な世界をつくる若者の育成を目標にしています。

国際バカロレアのここが凄い!

国際バカロレア機構(本部ジュネーブ:1968年設立NPO)が提供する国際的な教育プログラムで、認定校に対し共通カリキュラムを提供し、世界共通の国際バカロレア試験を実施したり、国際的に通用する大学受験の資格(IBDP:International Baccalaureate Diploma Program)を授与しいます。世界共通のプログラムですから、学生は世界のどこに住んでいても同じ教育を受けることができます。日本でバイリンガル教育を受けることによって、日本に居ながら留学への視野や選択肢も広がります。

コースの種類や特徴

初等教育(PYP)は3~12歳、中等教育(MYP)は11~16歳、高等教育(DP)は16~19歳を対象にしており、DPの資格は大学受験の世界共通パスポートになっています。
学校はIBプログラムを全て導入してIBに加盟することもできるし、IBの理念に沿いながら一部分プログラムを導入をすることも可能です。平成29年現在、世界146か国で4846校がIBプログラムを導入しており、使用言語は主に英語・フランス語・スペイン語です。
日本では1979年よりこれまでに46校がIB認定校になっていて、約半数が公立校です。ほとんどの学校で国語以外の教科は英語で行われていましたが、2016年からは9校のDPで、一部の教科を日本語による授業と試験と評価を実施するようになりました。
2009~2011年に世界中のインターナショナルスクールを対象にした研究によれば、IBプログラムで初等教育や中等教育を受けた生徒は、そうでないインターナショナル・スクールの生徒よりも成績が良いという結果が出ています。またIBDPで教育を受けた学生は、すでに大学レベルの学習の準備ができているので、大学では大量の学習をこなすことができ、時間の使い方にも慣れていて、同期よりも早く卒業する学生もいるようです。文科省ではIBDPを導入する学校を2020年までに200校以上に増やす目標を揚げています。

学習者の目標

IBの学生像は「探求する人、知識のある人、考える人、コミュニケーションができる人、信念を持つ人、心を開く人、思いやりのある人、挑戦する人、バランスのとれた人、振り返りができる人」であり、学生は実践を通してそれに近づこうと努力します。2か国語以上を話し国際的な視野を持ちながら、それを言葉で定義づけることができ、考える力が身についていくので、その強みは生涯の財産となります。

転勤族に有効な国際バカロレア

親の仕事の都合で世界中を転勤して回る家族にとっては、国際バカロレアはとても有効なプログラムです。世界中のどこの国際バカロレアでも、教育方針やカリキュラムが同じなのでスムーズに転校できます。IBDPの試験は5月ですが、これに失敗しても卒業後の11月に再受験ができます。

日本における国際バカロレアの短所

日本の英語イマージョンスクールで国語以外のすべての授業を英語で受けるとすれば、限られた時間に学習する国語で日本語の読み書きは十分なのでしょうか?学校ではほとんど英語脳を使い、家庭では日本語脳に切り替えながらも宿題は英語でこなし、塾で日本語の読み書きの補習を受けるという生徒も出てくるかもしれません。子どもにとって結構負担のかかる教育になるかもしれませんね。ですが、頑張ってそれを乗り越えれば、日本に居ながらバイリンガルになれるので努力は報われます。ただし、日本の大学へ進学を希望する学生には日本語がデメリットになりそうです。大学によってはIBDPを受け入れない学校もあるので確認が必要です。

バイリンガルは国際人の条件

何かと驚くのは、ヨーロッパ人が第二外国語である英語を堪能に操っていることです。オランダ、ドイツ、フランスの人たちは、学会のプレゼンテーションはもちろん質疑応答も平気で英語を使いこなしています。日本でももっと世界で勝負できる若者が増えれば素晴らしいと思います。それには日英のバイリンガルであることが最低の条件となるわけです。
言葉の壁を乗り越え、グローバルな視野をもち、人間味のあふれる人材を育成するという国際バカロレアは、今後の日本では理想の教育になるのかもしれません。
国際バカロレアの教育によって、将来日本を担うたくさんの若者が国際人として立派に成長し、世界を舞台に活躍するときに、日本でも真の国際化が始まります。そうなれば学生は学業だけでなく、人間力も含めた総合力で評価される時代がすぐにやってくることでしょう!